(令和6年4月号)川を活かしたまちづくり
「悠々と流れよって、見かけは静かで優しゅうて、色も青うて美しい。やけど、水流に添う弱い川は全部自分に包含する気や。そのかわり見込みのある強い川には、全体で流れこむ気魄がある」と有吉佐和子氏の小説に表現された紀の川は、平安時代までは楠見付近から現在の土入川・和歌川の川筋を流れ、和歌浦に注いでいました。その後、川の流れが変わり和歌川、大門川、市堀川などが紀の川から分離されました。和歌川などは内川と呼ばれ、水流も少なくなったため、戦後の産業の進展や家庭からの排水で、昭和40年代には水質が全国1、2位と言われるまで悪化しました。
そのため市民の方々が内川をきれいにしようと熱心な活動を行ってこられ、浄化対策や下水道など国・県・市による対策に繋がった結果、内川が以前と比べ随分きれいになり、京橋付近の市堀川(いちほりがわ)ではカヌーなどの水上体験や沿川でのオープンカフェなど、川に親しもうという動きが活発になってきました。昨年には、自治会、民間団体の皆様と共に、川とそれに繋がる地域を活性化する「市堀川かわまちづくり計画」を策定し、昨年国から認定されました。今年からは官民共同で南海電鉄和歌山市駅や京橋、ぶらくり丁周辺を結び、うるおいと賑わいのあるかわまちづくりを進めていくことになっています。
市内には紀の川はじめ大小の様々な河川がありますが、このコラムが読まれる頃には、和歌川、大門川や水軒川などでは地域の方が植えてこられた桜が見ごろだと思います。毎年のことながら一斉に咲く桜の美しさに感動しながら花見を楽しんでいますが、川面に映る桜、川沿いの桜吹雪も格別の趣があります。川は、災害など危険な側面もありますが、地域の宝ともなります。春の風に誘われ、街なかの川、田園地域の川など散策され、お近くの川に関心を向けていただければと思います。