(令和3年3月号)チンチン電車
市電が廃線されて今年で50年になります。「チンチン」という鐘の音を鳴らして「ガタゴトガタゴト」と走るチンチン電車(市電)の姿を覚えておられる方も少なくなってきました。私もチンチン電車に乗って、旭橋から和歌浦の景色や夕日を眺めながらゆっくり流れる時間が心地よく、移動そのものが楽しみだったと記憶しています。1971年3月31日にその姿を消すこととなった市電の正式名称は、南海電気鉄道和歌山軌道線といいます。
それから半世紀。その南海電鉄さんが、IR(統合型リゾート)が実現すればとの条件付きではありますが、自動運転など次世代交通につながるBRT(バス高速輸送システム)の導入に向けた共同研究をしてくれることになりました。実現までには様々な課題がありますが、まちの中心部を走ることになるBRTは通勤・通学はもとより観光振興につながり採算性にも大きなプラスになるものと期待できます。
近年、利用者の減少で採算の取れないバス路線の廃止が続き、公共交通不便地域が拡大しています。交通弱者をなくすため、現在、市において予約制の乗り合いタクシーや市営の地域バスなどの検討を続けていますが、運営費などが大きな課題となっています。
そうしたなか、技術革新により、自転車からハイブリッドバイク、そして自動運転へと多様な移動手段が生まれつつあり、次世代の交通へと乗り物の歴史が大きく変わろうとしています。安全で便利な移動は、まちづくりの基本です。それに加え、快適さも移動の大事な要素です。
チンチン電車に思いを馳せながら、今回の夢のある研究を通じて、市内全体の次世代の交通ネットワークにつながるよう取組を進めてまいります。