ドア破壊・ファイヤーファイターサバイバル・解体施設を借りた消防訓練(中消防署)
解体施設を借りて消防訓練を実施しました
ありがとう汐見住宅
令和2年9月1日から9月30日まで、和歌山市汐見町にある市営汐見住宅を借りて訓練を実施しました。
汐見住宅は昭和49年に建てられた地上7階建て、延べ面積5,000平方メートルを超える共同住宅で、令和元年まで40年以上市民の住まいとして活用されていました。
今年10月には解体業者に引き渡され、その役目を終えてしまいますが、最後の日まで訓練施設として市民のために役立ってくれました。
ドア破壊訓練
「実際にドア破壊する訓練がしたいです」
これは施設を借りるきっかけとなった職員の一言です。
火災などでは消防隊がドア破壊して人を助ける場合があります。しかし、実際に現場で経験できる職員は一握りです。
汐見住宅は7階×13室=合計91室の鉄製玄関扉があります。ドアの隙間にバールを差し込むコツ、バールの掛かり具合、自分たちの持っている道具でどうやって素早くドアを開放するか。職員一人一人が納得できるまでドア破壊をする訓練ができました。
火災現場で扉を素早く開放できるかは中で倒れている人の生死に直結します。訓練のおかげで職員も自信をもって現場に挑むことができます。
ファイヤーファイターサバイバルの訓練とは言わないで
この施設のおかげでできた訓練を紹介します。
火災現場をイメージして空気呼吸器をつけた隊員が煙の中の逃げ遅れ者を助ける訓練をします。訓練中、隊員は前が見えないので手探りで逃げ遅れ者を探します。そして、逃げ遅れ者を見つけた後にわざと家具などを使って退路をほぼ塞ぎます。隊員は、煙の中脱出しようとしますが退路がわからず頭に?が浮かびます。視界がないので「?」を抱きながらも、別の退路を探す隊、家具を破壊して退路を作る隊、窓や扉を壊して脱出する隊、呼吸器の空気がなくなる隊と隊によって対応は様々です。
もし、火事現場の退路で「?」が浮かんだ場合、重要なことはなんでしょうか?
「まずは、外の仲間に助けを呼ぶこと」ではないかと思います。
近年でも火災現場で消防職員が殉職する事例が後を絶ちません。事故事例のなかには、緊急事態を知らすこともなく殉職している職員もいます。
この訓練は”人を助ける側から助けられる側になるかもしれない訓練”に切り替わる”ファイヤーファイターサバイバル”という技術が必要になる訓練です。外の仲間に「退路が断たれたかもしれない。外からも救出してほしい(メーデーコールといいます)。」と伝えることができる隊を作るための訓練です。
ちなみに、ほぼ塞いだ退路は、”フルリムーバブル”というファイヤーファイターサバイバルの技術で脱出できる退路にしていましたが誰も通ってくれませんでした。視界なしで通るにはよっぽどの覚悟と自信がいると思います。
消防職員にとっても火災現場は命掛けです。そのことを再認識できる訓練だと思います。
部隊指揮運用訓練
中消防署の各消防隊を集めて部隊指揮運用訓練をしました。内容は中高層建物火災です。実際のマンションを使って訓練ができたことで、消防用設備の使い方や実際に放水した場合の直下階の水損状況などを実災害と同じように実施することができました。
無償の協力
汐見住宅を管理しているのは和歌山市住宅第2課です。中消防署とは全く接点がありませんが、「市民のために消防さんが使ってくれるのならいいよ。」と快諾して頂けたおかげで、期間限定訓練施設が実現しました。住宅第2課の心意気に感謝しかありません。
消防車を見に来てくれる子供たちの笑顔のおかげで「今日も一日がんばろう」と思えました。
訓練期間中は、破壊音や車両のエンジン音などの騒音問題が発生しました。1か月間という長い期間、心置きなく訓練に集中できたのは住民の方の理解と協力のおかげです。本当にありがとうございました。
このページを見ていただいた消防職員のみなさまへ
消防活動に水損や破壊はつきものです。しかし、訓練ができる施設は少なく、どこの消防本部でも課題となっていることではないでしょうか。
和歌山市中消防署では、このような解体予定施設などを借用する方法をマニュアル化して定期的に実施できるように取り組んでいるところです。
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